ユーダイモニア マネジメント


自分の強みで何に貢献するのか

執筆者:小屋一雄
 決して順風満帆ではない出版業界の中で「さあ才能に目覚めよう(日経新聞出版社刊)」が2001年の発行以来ベストセラー、ロングセラーを続けている背景にはその本自体の出来の良さに加えて、「強み」というものを個人の生活あるいは仕事のなかで活かしたい、という多くの人々の願望が見られる。企業研修でも、チームメンバーの「強み」を理解し活かしていくというテーマのトレーニングのニーズは高まり続けている。

 そんな風潮は、日本社会が「自発性や個性を犠牲にした均質性」という過去の勝ちパターンから脱却し「個を活かす」という新しい成功パターンに移行する上でも歓迎すべきことだと思う。しかし、実際「さあ才能・・」の読者何人かと話してみると若干危惧せずにはいられない状況も見受けられる。

 この本の中で紹介されているのは「ストレングス・ファインダー」といういわば「才能発見アセスメント・ツール」であり、表紙の裏側に刻印されているIDを使ってオンラインで自分ならではの強み(34の資質の中からトップ5がオンライン上でレポートされる)を知ることができるというものだ。

 ポジティブ心理学の研究から、自分の「強み」を知りそれを使うことにより、人はより充足感を高め、自信を持ち、元気になり、ストレスは軽減され、打たれ強くなり、仕事でも高いパフォーマンスを発揮できる、ということが分かっている。そう考えると、より多くの人が自分の「強み」に気付くことは有意義なことだという点では間違いがないだろう。

 しかし、アセスメントを受けた人のブログなどで、「これは面白い」「当たっている」といったコメントや、自分のトップ5資質を公開している有名人の名前を挙げて「○○さんと2つも資質がカブっていました。ラッキー!」などといったコメントを見ると、読者の多くは「強み」を知り活かす、というよりも占い的なエンターテインメントとしてこのツールを楽しんでいるという事実に当惑してしまう。

 私は10年以上ストレングス・ファインダーやVIA-ISなどのアセスメント・ツールに関わっているが、研修やコーチングのクライアントにこのアセスメントを受けてもらって解説をすると「すごい、何で分かるんですか?」などと占い師に感銘を受けた時のような反応をする人が少なくない。何故分かったのかというと本人がちゃんとアセスメントに回答をしたからに他ならないのだが、自分の中で「強み」として整理されていないので、モヤモヤとした自分の個性が「強み」としてまとめられると嬉しいというのは良く分かる。また、これが「強み」を活かす第一歩であることを考えると、このポジティブな感情はとても大切なものである。

 だが、あまりに多くの人がこの嬉しさで満足してしまい、次の行動に移っていないことは残念だとしか言いようがない。「強み」の効用というのは「強み」を知ることだけではなく使うことによってより高いパフォーマンスを発揮することができる。知るだけで終わらせてしまうのは、文法ばかり覚えても少しも使えるようにならない日本の中学英語のようなものである。

 「強み」を知ることはアセスメント・ツールを使えばある程度は出来てしまうので簡単だが、それを使うとなるとなかなかどうしていいか分らないものである。知るということは自分の中で完結できるのだが、使うという行動に移すと、他者との人間関係も影響してくるし、自分のコミットメントも必要になってくる。面倒くさいかもしれないが、これをやらなければ「強み」は単なる自己満足的な可能性にしか過ぎないとも言えるだろう。ピーター・ドラッカーも「経営者の条件」の中で「強みを活かすということは成果を要求することである」と書いている。

 それでは、「強み」を知って何をするべきか?この質問に対しての答えとして、次のプロセスを提案をしたいと思う。

1)理解をする:
レポートに書いてある「強み」はどんなものを指しているのかを、自分なりにでもいいから理解する

2)自信を持つ:
強みを活かしている自分をイメージし、モチベーションを高める

3)内省をする:
レポートに書いてあることに納得するだけではなく、それが自分にとってどのような意味があるのかを考える。VIA-ISとストレングス・ファインダーの違いについては別の場で説明をするが、VIA-ISの結果を見ることによって、「強み」としての行動の背景にある信念・美徳が見えてくる。この信念・美徳が自分らしい強み行動をさらに高めるのだが、時としてこの信念が「~でなければいけない」「~べきである」といった「思い込み」となって自分のパフォーマンスを下げていることがある。自分の「強み」はどんな信念と繋がっているか、それは自分として好ましいことかどうかを考えることは自分の行動と信念・美徳との一貫性を持つために重要である。

4)他人に対しての影響を考える:
「強み」は場を無視してそれを使い過ぎるとマイナス効果となることがある。自分の「強み」を周りの人はポジティブに受け止めているかどうか、を考える。

5)目標を明らかにする:
自分の「強み」を使って実際に貢献できる目標は何かを明らかにする。

 この他にも自分の「強み」を知ってからできることは多々あるが、まず必要なのはこれらのプロセスを経て、「強み」で一体何に貢献するかを考えることである。先にも引用したピーター・ドラッカーは「自己開発の成果の大部分は、貢献に焦点を合わせているかどうかにかかっている」と書いている。

個人レベルではとりあえず「強み」を活かした活動をして何が起こるかを見るという方法もあるだろうが、組織で働く者にとっては「強み」を活かすことが目的なのではなく、自分が心から達成したいと思う目標を「強み」を自分らしく使うつかうことによって達成することが目的なのだ。

今後、より多くの人がアセスメント・ツールの受検にとどまらず、組織の中で自分が求められていること、自分が貢献できることを明らかにし、自分の「強み」を自分らしく活かせるような職場作りに取り組んでいきたいと思う。これが「強み」という宝を持ち腐れとしない真の自己開発となり、またビジネスパーソンとしてのウェルビーイングにつながっていくだろう。

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