ユーダイモニア マネジメント


そのプロジェクト、本当に大事なものですか?

―過多な選択肢はいらない。必要なのはシンプルなコンセプトと実行力。―

本資料は「ジェイ・シャームインサイト」2009年6月号に発表された原稿に加筆したものです。
執筆者:小屋一雄
 バラエティーに富んだチョイス、数多くの選択肢は消費者の様々なニーズを満たすことができ、顧客をそのブランドにより密接につなげる。そんな一見当たり前に聞こえる考えを否定するのが「The Paradox of Choice(選択肢の矛盾)」である。
 同名書籍の著者であるバリー・シュワルツはその中で興味深い実験の結果を公表している。
 その実験はあるスーパーマーケットでの高級ジャムの試食販売の現場で行われた。1つのテーブルでは24種類の違った種類の高級ジャムが並べられ、もう1つのテーブルでは6種類の高級ジャムが並べられた。その結果、24種類を並べたテーブルの試食者の3%、そして6種類を並べたテーブルの試食者の30%が実際にそのジャムを購入した。
 この他にも色々な事例があるが、通常人はより多くの選択肢を求めるものの、実際に豊富な選択肢を手に入れてしまうと、今度はその中から1つを決定するためにプレッシャーを感じ、多くの時間とエネルギーを費やすことになる。その結果、選ぶことや決めること自体を放棄しがちになる。また、多くの選択肢の中から1つを選んだとしても、それが1番正しい選択だったかどうかという確信は持てず、不満足感が残る。
 つまり、消費者のために拡張された商品ラインアップが逆に消費者に不満を与えているという皮肉な状況がおこりかねないのである。
 これは消費者に限らず、一般的な人の幸福観にも大きく影響している。人生、生活の中でも選択肢が必要以上に多いと、最善のものを選択しようという欲が高まり、余計な時間とエネルギーを浪費し、結局生活にたいする不満感が残る。

 このような、人の経済行動に関する研究と心理学的な研究を融合した学問が、行動経済学である。ダニエル・カーネマン(2002年にノーベル経済学賞を受賞)は、「行動経済学」の立役者とされているが、心理学者であるカーネマンが非論理的な経済活動を心理学と経済学の両面から解明し、ノーベル経済学賞を受賞したという事実は今後の経済学を考える上で非常に意味深いと思われる。

 この「選択肢の矛盾」は職場における情報についても言えるのではないだろうか?
 多くの情報は行動の選択肢を豊富にし、色々な可能性を与える。しかし、私は余りに多くの情報、選択肢を持っているために本当に取り組まなくてはならない行動に十分な時間とエネルギーを注げていない職場を数多く見てきた。また、余りに多くの情報を社員調査などから入手し検討したものの、結局何の効果的なアクションにもつなげられなかった人事部の方々にも少なからず出会ってきた。
 大前研一さんの訳書「ハイコンセプト」の中で、トフラーの「第1の波:農業革命」「第2の波:産業革命」「第3の波:情報革命」の次に来るのは「第4の波:コンセプト」ではないかと書かれているが、今のビジネスにおいては最早情報量だけでは勝ち残れなくなっているのは事実だろう。
 より多くの情報よりも、本当に重要な活動に時間とエネルギーを注げるような仕組み、つまり全活動の指針となるコンセプトをしっかり持ってそれに注力することがより大切になるのである。
 
 最近、このような考え方で成功している事例を紹介した本が続けざまに出版され、ギャラップの名前も引用されたのでここで簡単に紹介したいと思う。

1冊目は「大事なことだけ、ちゃんとやれ!(ゼロ成長企業を変えた経営の鉄則)」(ジェームズ・キルツ・著、高遠裕子・訳)である。本書では、米国のジレット社など複数の企業を再建させた経験から、色々な状況、異なる企業文化が背景にあっても結局は、目標管理、行動計画、実行、成果の測定・検証、という原理原則に戻り、色々手を広げないで本当に大切なことに時間とエネルギーを集中するべきだと書いてある。
その中で、業績評価のツールとしてギャラップ社の社員エンゲージメント調査(Q12)が紹介されている。著者はQ12の絞られた設問数(12問)とマネージャー毎のフォローアップを促すギャラップのシンプルな分析を高く評価している。社員意識調査と称して本当に大事なことかどうかは分からないけれどとりあえず情報収集のために聞いておく、というあいまいなコンセプトで従業員に対して100問もの質問をする社員調査と比べて、本当に大事なことだけを聞いて、しかもその結果をフォローすることにフォーカスしているQ12は無駄を省こうとする著者の意向にぴったり合ったということだ。

もう1冊紹介したいのが、「ゴールド・スタンダード(ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー 世界最高のお客様経験を作りだす5つのリーダーシップ法)」(ジョゼフ・ミケーリ・著、月沢季歌子・訳)である。本書は世界一流のラグジュアリー・サービスを提供し続けるリッツ・カールトンの成功の背景にあるリーダーシップ戦略について分かりやすく説明したものである。
その中で、毎年経営陣が掲げる評価軸コンセプトが「成功への要因ピラミッド」の5つの要因として紹介されている。リッツ・カールトンが現場を十分に理解した上で作成された当コンセプトの5つの要因とは以下の通りである。
1:リッツ・カールトン・ミスティーク
2:従業員エンゲージメント
3:顧客エンゲージメント
4:優れた商品とサービス
5:収益目標

色々なことが起こる現場、あふれる情報、多くの評価対象となりうる活動、そんな中で経営陣と従業員が共通の評価軸を持ち、本当に大切なことを理解し、同じ成功に向かって邁進することは複雑な状況、組織の中で成果を出す上で非常に大切なことである。


これら2冊の本で紹介されている内容から、本当に結果を出す組織とは、まずブレのないコンセプト及び評価基準を作り、様々な選択肢に手を出すのではなく、本当に大事なこと、つまり組織のパフォーマンスを確実に高めることに時間とエネルギーを集中している、という共通項が見えてくる。
不況が続く今こそ、すべての企業のゴールである収益向上と持続的成長にむけて本当に大事なことは何かを今一度考え直し、それをコンセプト化し、全社員が一丸となってその実現に注力をするべき時であろうと思われる。

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